「デジタル」の効率性を味方につける
従来の不況と比べ、現代の企業が直面している不況は、「デジタル」という枠を使用できるという点で大きな違いがあります。この数年でまったく新しいチャネ ル、メディア、技法などが続々と登場し、ビジネスの幅を広げています。
新しいことにチャレンジすることは、それなりのリスクが伴うと感じるかもしれません。しかし、現代において「デジタル」を無視することはできないのです。厳しい時代だからこそ、新しいことへチャレンジし、変化に対応できる企業であることを消費者へアピールしましょう。
デジタル・マーケティングには、従来のメディアにはない、以下のようなメリットがあります。
1. 比較的安価で利用できる
新聞やテレビといった従来の媒体は、一定の成果を達成するために十分な広告量の展開と、十分な広告の予算配分が必要でした。しかし「デジタル」ならば、 キャンペーンの規模や予算に応じて、様々な方法を選択できます。
例えば、検索エンジンの検索結果に自社サイトへのリンクを表示させる「リスティング広告」の場合、クリック数の成果に応じて広告料金を支払えばよく、広告 自体の制作費もかかりません。またリスティング広告は購入する検索語や設定する期間を自由に設定することができるため、小規模の広告展開から始めて 効果を見ながら増やしていくことが可能になります。逆に、突発的なイベントやプロモーションの場合は、一時的に増やすことも容易です。
バイラルマーケティングも、低予算で取り組むことのできる施策のひとつです。企業はメディア枠を購入する必要がなく、素材を提供するだけで済みます。あと は、消費者にクチコミで情報を広げてもらえばよいのです。
2. 費用対効果が明確にわかる
消費者がパソコンやモバイル上で接する広告(リスティング広告、バナー広告など)は、企業が望む行動を消費者がとった場合にのみ料金を払えばよいという 成果報酬体系です。
消費者行動の測定基準は、「クリック・トゥ・レジスター(クリックによって登録ページに誘導する仕掛け)」や、「クリック・トゥ・パーチェス(クリックによって購入 ページに誘導する仕掛け)」など様々です。費用対効果がこれほどに明確な広告手法は、これまでありませんでした。
3. 消費者データをマーケティングに活かす
企業と消費者との双方性を実現できる「デジタル」は、消費者の様々なデータを取得することができます。「デジタル」によって獲得した消費者データは、コミュ ニケーションの賜物であり、次なるコミュニケーションの「燃料」でもあります。消費者データを取得することで、プッシュ・メールを送信するなど、継続的なコミュ ニケーションが可能になります。
デジタル・マーケティングによって得られる消費者データを仮に第三者機関から入手しようと思えば、多額の予算が必要になります。また、デジタル・マーケ ティングをうまく実行できれば、消費者の意見や考え方をも知ることができます。それらを限られた予算で実現したとすれば、デジタル・マーケティングがもたら すメリットは計り知れないのです。
4. 興味がある人にだけアプローチができる
インターネット広告は、ユーザーの趣味趣向を特定しやすいという特徴があります。例えば、ホームページ内のバナー枠に広告を出す場合、そのホームペー ジがどのような方をターゲットにしたホームページなのかということを事前に把握した上で広告を出せるため、その広告を見る方は少なからず興味がある人に 限定されます。興味がある人に限定されることで、効果が無いと分かっていながら広告を出し、その費用が無駄になるという事がありません。
広告量シェアにおいて、競合との覇権争いばかりを繰り広げるのではなく、競合がまったく手をつけていない「デジタル」領域で一早い行動を起こすことをお勧 めします。

デジタルの様々な手法を使いこなす
企業活動が厳しい環境において、柔軟性のあるマーケティング活動はとても重要です。先行きの不透明さにより予算配分の期間は細分化され、予算の流動 化によりキャンペーンの十分な予算確保が困難になります。しかも競合が失敗したときの即時対応が求められる現在においては、あらゆる環境において柔軟 に働き、しかも低予算で実現しなければなりません。
費用対効果を上げる最も手っ取り早い方法は、「デジタル」を活用することです。さらに、ウェブサイト、モバイル(携帯)サイト、E メール、ソーシャル・ネットワー クといったデジタル・チャネルで得られたデータを分析することで、マーケティング戦略の改善点が分かり、スピーディなマーケティング効率の向上を実現する ことができます。
デジタルを利用したマーケティングは大きくわけて以下の9つに分類することができます。
1.ディスプレイ広告
ブランド認知やトラフィック増大を目的として、ポータルサイトや競合しない他の企業のウェブサイトに広告を掲載する手法です。バナー広告、ビデオ広告など 様々な手法があります。限られた予算や実行期間において大規模なイベントやテレビ番組のスポンサーを務めるのが厳しいときは、小規模で、低予算、しか も短期間で実行可能なイベント企画を擁した、ウェブ上のスポンサー枠獲得を検討しましょう。
2.Eメールマーケティング
短期間で需要を喚起するには、ターゲティングされた「ダイレクト・Eメール」を実行しましょう。Eメールは、高効率で、消費者に送付しやすいツールです。これを より効果的にするには、セグメントされた消費者データと、「クリック・トゥ・レジスター(クリックによって登録ページに誘導する仕掛け)」や、「クリック・トゥ・パー チェス(クリックによって購入ページに誘導する仕掛け)」といった仕組みが必要です。これらによって、小規模でよりターゲティングされたメールキャンペーン が実現できます。メールにデジタル・クーポンを付ければ、売り上げを伸ばす効果も期待できるでしょう。Eメールだけでなく、モバイルメールも効果的です。
3.リスティング広告
関連性のあるキーワードに入札し、検索エンジンでそのキーワードが検索されたら、検索結果に広告を表示して露出およびトラフィックを得る手法です。グー グルのアドワーズ広告、オーバーチュアのスポンサードサーチなどがよく知られていますが、興味がある人に確実に情報を届けることができるため、今では 多くの企業が積極的に活用しています。ニッチな分野(キーワード)を選べば、非常に低コストで実施できることも魅力のひとつです。
4.ネットPR
オンラインを中心とするPRメディアを利用して、ブランド力とトラフィックを高める手法です。業界別、カテゴリー別などになっているメディアが多く、情報を伝え たいターゲットに近づくことが可能です。
5.検索エンジン最適化(SEO)
大手検索エンジン(グーグル、ヤフー、Bing)の「オーガニック」な検索結果(広告枠ではない部分に表示される通常の検索結果)で自社のサイトを上位に表示 させることを、「検索エンジン最適化(SEO)」といいます。リスティング広告とあわせて実施されることが多いようですが、その場合は、リスティング広告の結果 とオーガニック検索の結果ができるだけ重複しないようにすると、費用を節約することができます。
6.アフィリエイトマーケティング
アフィリエイト・マーケティングとは、商品やサービス、あるいは企業サイトのリンクを、ほかのウェブサイトに掲載する技法です。消費者がリンク掲載先のサイ トから自社のサイトにアクセスした場合に、あらかじめ設定した金額をサイト主催者に支払うという仕組みになっています。比較的安易に実施できるマーケティ ングです。
7.ソーシャルメディアマーケティング(SMM)
近年、「mixi」に代表されるソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が多くのユーザーの関心を集めています。SNSを活用するメリットは、極めて低コストで、も しくは一切コストをかけることなく、多くの消費者にリーチすることができることです。
8.バイラルコンテンツキャンペーン
ブログ、ツイッター、Eメールなどを通じて、企業情報や製品情報などを消費者自らによって広めてもらう手法です。ブログ・ページに簡単に貼り付けられるブロ グ・パーツを用意したり、新製品の情報や写真などを配布するなど、バイラルが起こりやすい仕組みをあらかじめ準備しておくことで、より効果的に実施するこ とができます。
9.コンバージョン率最適化(CRO)
自社サイトにおいて、サイト訪問から購買(コンバージョン)に至る過程を改善し、見込み客、登録申込者、顧客を増やす手法。クリック率改善、購入手続きの 簡素化などを変化させると驚くほどコンバージョン率が上がることも珍しくありません。
その他、カリスマ性のある人々を起用したコンテンツを作る、競合しない企業とのコラボレーションを実施する、サイト上で効率的に消費者調査を行うなど、 様々な手法も検討に値します。
日本では既に、企業の大半が自社のウェブサイトを持ち、メールマガジンを発行する時代になっています。パソコン向け、ケータイ向けを問わず、いわば広告 主企業が“自社メディア”を運営している状況にあるといえるでしょう。今後は、自社サイトを軸に、マス広告、ビロー・ザ・ラインなどと組み合わせることで、より 効果的なマーケティングを行うことが必要になります。
デジタル・ソーシャル・メディアに必要な危機意識と対応策
ソーシャル・ネットワークは、企業にとってメリットばかりではありません。時には企業を危機に陥れることもあります。例えば、ブランドを攻撃する消費者グ ループを形成するインフラになりうる可能性もあります。検索エンジンに企業名やブランド名を入力すると、ネガティブな結果が表示されるかもしれません。1ブ ロガーの攻撃が、全世界を巻き込む大騒動へと発展することもあるのです。企業はしっかりと、デジタル・ソーシャル・メディアを危機管理の対象と捉えなけれ ばなりません。
現在および将来の不況に対処するには、以下のような危機管理を構築する必要があります。
1.危機対策チーム、またはオンライン共有スペースを構築する
不測の事態に陥る前に、危機対策チームをあらかじめ結成しておくことが大切です。パスワードで保護された共有ウェブサイト、もしくはwikiを制作し、企業の 継続プラン、関連素材、問い合わせ先、ガイドラインなどを作成しておきます。 wikiを活用すれば、メンバー全員がファイルや検索結果、興味をもった記事など をアップロードすることができます。いわばオンライン上で様々な成功事例を共有する「集会所」のようなものです。
2.「シャドー・サイト」を制作する
平常時には外部アクセス不可能な緊急ウェブサイトを作成し、危機に直面した時にユーザーや顧客が早急に知りたいと考えられる内容をあらかじめ用意して おきます。そして、実際に危機に直面したら、その内容に多少の修正を加えて公開します。これによって、電話やメールによる問い合わせの殺到を避けること ができ、問い合わせ窓口をウェブに集約することもできます。 例えばトップの謝罪コメントを文書やビデオで用意しておいたり、死亡事故が起きた時などは病院とのリンクを貼っておいて病院の状況が分かったり、食中毒 の場合などは専門家に菌の性質や発症する症状などをコメントしておいてもらうなど業種に応じて様々な対応は考えられます。緊急時の急なアクセス量に備 えて回線を太く、通常のホームページより抑えた色調で作るなどの配慮も必要です。アメリカではテロ以降このシャドーサイトを採用する企業がだんだんと増 えてきています。緊急時こそコミュニケーションの継続が必要で、メディアや関係者からの信頼を回復する事が大切です。
3.インフルエンサーの特定作業とその影響力分析
インフルエンサーを特定し、危機に直面する前に良好な関係を構築しておきましょう。また特定のインフルエンサーの影響力も調べておくことは言うまでもあり ません。
4.ソーシャル・メディアにおけるコーポレート・ガイドライン
あらかじめ企業のガイドラインやルールを策定しておきましょう。定期的にルールを告知し、社員に周知徹底することが重要です。
5.シミュレーションの実施
現実的なシミュレーションを実施することで、危機管理に対する理解が深めることが重要です。危機発生時にどのような行動を起こせば良いのかということを、 纏めておきます。





