不況期の「巣篭もり」現象の背景

不況時にはインターネット販売が伸びると言われています。その理由を、低価格であるとか、交通費がいらないといった観点からだけで考えると価格競争の 底なし沼に足を突っ込むことになるでしょう。

日米で行われた調査・実験によれば、ネット上で消費者は価格を比較して一番安いものを買っているわけではないことがわかっています。例えば、書籍市場 においては、オフライン店舗間よりもオンライン店舗間における価格のばらつきが大きく、高い価格を提供しているサイトが市場シェアを拡大しているケースも みられます。つまり、価格だけがネット販売利用の理由ではなく、ショッピングに外出するという活発な行動を取りたくないムードにあるから、消費者はインター ネットを利用するのです。

まず理解しなくてはいけないのは、不況時には消費者がいつも以上に「損失回避性」ムードになっていることです。消費者は、安いかどうかというよりは、その 値段に見合う価値があるかどうかを以前よりは慎重に判断するようになっています。不況下にある消費者は身がすくんだ状態にあります。そうした状態では、 生活や仕事の必需品を買うことは購買を正当化させやすいのですが、ぜいたく品は後回しにするという傾向があります。

さらに、不況時には「状況に似合った行動をとらなくてはいけない」というムードが蔓延すると指摘するマーケターもいます。たとえ金銭的余裕があったとしても、 リストラされた派遣社員たちの様子が連日ニュースで報道されれば、必需品でもないものを買うことに罪悪感を感じるようになるというのです。

しかし、ちょっとした工夫でそれらを回避することも可能です。例えば「通常より価格が低くなっている」、「多くの用途に使える」といったように、購買を正当化で きる理由があればせいたく品を購入することに対する心理的ハードルはかなり下がります。ネット販売を行っている各店舗はキャッチコピーやデザインなどを 駆使して、消費者に割安感をアピールしています。さらに、自宅にいながら買い物ができるネット販売は、ぜいたく品を買う行為を他の人々に見られることがな いため、罪悪感を感じる度合いが軽くなります。

不況期においてインターネット販売はとても便利なツールです。逆に考えれば、不況期にこそ、インターネットで高価格品やぜいたく品を販売するチャンスなの です。

社会に影響を及ぼす人々

現代においては、多くの消費者は企業からの詳細な情報を直接受けることがあまりありません。オピニオン・リーダーと呼ばれる情報に敏感な人々を通じ、情 報を受けているのである。企業からの情報は一段階目としてオピニオン・リーダーに流れ、二段階目としてオピニオン・リーダーから一般消費者に流れます。

オピニオン・リーダーは「インフルエンサー」「通」などと呼ばれることもあり、インターネット上ではそのように呼ばれる人々のパワーは増大される傾向がありま す。彼らは世の中に多大な影響を及ぼしますが、実際のところは決して特別なエリートではなく、表面上はあくまで平凡な一消費者です。

企業のマーケティングメッセージがあふれている現在では、消費者は押し付けがましい広告を避ける傾向があります。こうした変化に対応して、多くの企業で は従来のマスメディア広告に加えて、クチコミを活用する手法がとられはじめているのです。

ブルーカレント・ジャパンの調査では、いまや一般消費者の5人に1人は、一定の情報発信力を持つ「個人インフルエンサー」であるということです。同社は個 人インフルエンサーを、「コミュニケーション力」「信頼獲得力」「情報伝播力」をすべて備えた消費者と定義しています。クチコミを活用するバズマーケティング では、こうしたインフルエンサーの活用は欠かせません。

また、フォレスター社の調査によれば、インフルエンサーは2つのグループに分類されます。人からアドバイスを求められる「クラシック・インフルエンシャル(古 いタイプのインフルエンサー)」と、新しいデジタル・メディア・プラットフォームを駆使して、自発的にアドバイスを発信する「ニュー・インフルエンシャル(新しいタ イプのインフルエンサー)」です。

まずはインフルエンサーが誰かを特定することです。現在限りなく広がる「クチコミ」を考えれば、インフルエンサーの特定がどれだけマーケティングにとって重 要かがご理解いただけるでしょう。

情報の精度を上げる

メディアの環境が大きく変化していくなかで、現在ではブログやmixiのように消費者自らがコンテンツを作り出すというメディアも多くなってきています。

最近の調査によれば、mixiをはじめとして、SNSは日本の人口の3分の1を占めるぐらいまで登録者数が増えるという予想も出ています。利用者が増えると、当 然、いっそう個人の発信力が強まります。こうしたメディアを上手に利用することで、消費者と一緒にブランドを作っていくことができるという効果が期待できます。

また、webサイトの下部に「友達に教える」「ブログパーツを貼る」「mixiで紹介する」「ブログに書く」「つぶやく」などボタンが付け加えられていることがあります が、このようにして、企業の商品やサービスを消費者自身にプロモーターとして口コミなどで宣伝してもらい、利用者を広げるマーケティング戦略をバイラル マーケティングと呼びます。

現在では、クチコミマーケティング、バイラルマーケティングは非常に重要になっていると言うことができます。しかし、ただ情報を多く流せばよいというもので はありません。

法務省が2008年に発表した情報流通センサスによると、平成7年の情報量を100とした場合に、平成17年度の情報流通量は41030程度になっていますが、消 費量は1312程度です。情報の提供量自体は 410倍になっているのですが、情報の消費量は13倍にしかなっていない。つまり、全ての情報のうち3~4%しか現 状で消費されていなくて、あとの 97%は見られもせず捨てられているということです。

情報は明らかに飽和状態にあるわけです。 バイラルマーケティング、口コミマーケティングなどを利用する際にも、いかに消費者に受け取ってもらえる、しかも それを消費してもらえる情報としてより精度を上げていくかということが非常に重要になっています。